ものぐさブログ

徒然なるままにスポーツ観戦

中高生向け冬休みの推薦図書

先週日曜日に滋賀で全国中学駅伝を走った中学生も、今週日曜日に京都で全国高校駅伝を走る高校生も当ブログを見ていると信じて冬休みの推薦図書でも。ドストエフスキーガルシア・マルケスは紹介していませんのでご安心ください。

 

井上靖敦煌

読んだのは中学3年だったような。井上靖の本は『しろばんば』、『天平の甍』と来てこの本にたどり着きました。中国古代の宋代で科挙の試験を主人公が寝過ごして失敗したことから運命が変わり、街で知り合った女性が持っていた西夏文字に興味を持ち西域に旅立つ話です。主人公自体は架空の人物ですが作中には李元昊など世界史の教科書に出てくる人物も登場します。主人公を取り巻く女性や抜け目のない商人なども魅力的ですが、初めて読んだときにはその西域のスケールの大きさに魅了されました。それまで中国の歴史にばかり興味を持ってた私にシルクロード雄大さを教えてくれた偉大な本です。その影響で喜多郎の「シルクロード」のCDも買って聞いていました。井上靖の著作はその後も『楼蘭』、『蒼き狼』、『額田王』なども読みましたが、この本が一番お薦めです。

 

山際淳司スローカーブをもう一球』

こちらも中学時代に読んでいます。著者がサンデースポーツのキャスターを務めていたことから著者を知りこの本にたどり着きました。こちらは短編集であり、8篇の作品が含まれていますが、この中には有名な『江夏の21球』が含まれています。当時は『江夏の21球』を読みたくてこの本を買った記憶があります。本書の標題である『スローカーブをもう一球』については群馬の強豪校でもない高校が関東大会を勝ち上がりセンバツの切符を得る過程での話ですが、主人公がそれほどのキャラクターを持ち合わせていないものの魅力的なのは著者の腕によるのでしょう。基本的に著者の作品は淡々と描写されており、味わい深い出汁のような文章が多いですがコテコテのスポーツドキュメンタリーから味変したい方には特にお薦めです。著者が早逝したためもはや彼の作品を読む事はかないませんが、昨今のスポーツ事情を彼がどう描くのかは見てみたかったですね。もし『スローカーブをもう一球』を読んで興味を持った方は、『山際淳司スポーツ・ノンフィクション傑作集成』を探してみては如何ですか?

 

アガサ・クリスティオリエント急行殺人事件』他

こちらは高校時代に読みました。『オリエント急行殺人事件』他と書きましたが、最初にこの本を読むのではなく、他の作品を読んだ後にこちらに手を出すことをお薦めします。私は最初『メソポタミヤの殺人』でした。アガサ・クリスティの生んだ名探偵エルキュール・ポアロのデビューとなる『スタイルズ荘の怪事件』から始めるのがいいでしょう。その後有名な『ABC殺人事件』を経て『オリエント急行殺人事件』に手を出してもらえればより面白さが増すと思います。ポアロシリーズでいうと『アクロイド殺し』は賛否両論ありますので、アガサ・クリスティの著作をある程度読んで嫌いにならない自信をつけてからの方がいいでしょう。そしてこれらポアロシリーズを読んだら最後はポアロは出てきませんが、『そして誰もいなくなった』で締めてもらえればよろしいかと。推理小説の紹介ですので、具体的なあらすじは書けませんがここに挙げた作品はどれもお薦めです。また本を読んだ後に映像化されているデヴィッド・スーシェが演じるドラマを見るのもありでしょう。彼はもっとも原作のポアロに近いと言われていますし、やはり本で読むだけでは想像力にも限界がありますので。

 

サイモン・シンフェルマーの最終定理

こちらは社会人になってから読みました。ただし高校生でも十分読んでその面白さを堪能できると思います。題名は難しそうですがそこまで難しい数式などは出てこず、ところどころに説明があるので文系のため数ⅡBで数学を終えた私でも理解は出来ました。この本は数学本というよりは数学ドキュメンタリーですね。実際作者はTVプロデューサーのような方ですし。17世紀に遺された数学者のメモが数世紀にわたりその後の数学者を悩ませながらも魅了していく様をうまく書いていると思います。最終的に証明するワイルズの話に至るまでに夢破れた数学者のそれぞれの物語も胸を打つものがあります。数学界の難問というのはそもそも一般人には何を証明すればいいのか文言が難解すぎてわからないというものばかりですが、このフェルマーの最終定理は中学生でも証明すべきことは理解できますし、それゆえ有名なのでしょう。それにしてもフェルマーも難儀なやつですね。「それを記すには余白は狭すぎる」ってそりゃちょっとしたメモには書き記せないでしょうが、ちゃんと書くもの探して書きましょうよ。

 

以上4冊が私のお薦めです。中高生向けと書きましたが社会人が読んでも十分楽しめると思います。年末年始忙しいと思いますが、気になった方は是非手に取って読んでいただければ幸いです。